塩漬けになった売掛金、未収金、貸付金などの整理整頓 ~回収困難な不良債権の譲渡(売却)メリットが大きくなるケース~

不良債権の整理整頓、未収金の売却、節税、債権流動化
目次

不良債権と貸倒償却

事業をやっていると、様々な理由で回収できない未収金が発生するのが普通です。これを不良債権と言い、銀行やノンバンクのような金融機関では専門部隊がこのような不良債権の管理回収を行います。しかし専門知識を必要とするため、ノウハウの塊のような業務でもあり、一般的な企業で専門部隊を持つケースは(クレジットやローン等の自社割賦をやっている場合を除いて)難しいのが現実です。

未収金は(回収不能であったとしても)B/Sの資産の部に計上されています。「どうせ回収できないのであれば、B/Sから落として綺麗にしたい!」と言う経営者の方は非常に多く、経営的にも会計的にも真っ当な考え方です。しかし簡単に落とせない(=貸倒償却できない)のは税務に理由があります。

大人の事情もあり表現が難しいのですが、かなり丸めた言い方をすれば、経営や会計的には「早く落とせ!」ですが、税務的には「勝手な判断で落とすな!」です。破産や死亡(相続人無し)など明らかに債権債務関係が消滅している場合は貸倒償却して何の問題もありませんが、税務署が承認する外形的な基準を満たさないで償却した場合、後の税務調査で償却否認され追徴されるケースが時々あります。税理士の立場では保守的になってしまうのも理解出来なくはありません。

6つの債権処理方法

未収金等の債権処理について、以下6通りの方向性があります。

A.自社で回収する。

初期の入金遅れでは機械的にやることが決まってますので、自社回収すべきです。しかし滞納債権のレベルにエスカレーションしてしまうと専門部隊を作らないと難しく、労力と入金額とのコスパが合わなくなります。また債権回収は典型的な感情労働ですから、人事配置を間違えると離職につながるので注意が必要です。

B.一定の回収行為と年数の経過後、貸倒償却して捨てる。

税務調査に備えて貸倒償却のエビデンスを保存しておく必要がありますが、昔ながらのオーソドックスな方法です。少額債権であれば「時間経過」を理由にした償却でも税務上認容されます。しかし債権額が大きかったり多頻度である場合など、それなりの「償却理由」を求められる(償却否認の理由にされる)ケースがあります。

C.弁護士に回収委託する。

適切な弁護士事務所に委託すれば(手数料が発生しますが)かなり有効な手段です。債権の種類や状態や弁護士事務所による向き不向きがありますので「どの債権をいつ委託すべきか」について、回収委託を出す方(=企業側)に一定のノウハウが必要です。

D.回収専門会社(サービサー)に回収委託する。

法律(サービサー法)的に、サービサーに回収委託できる債権には制限があります。銀行やノンバンク以外の一般の事業法人では、対象にならないケースが大多数です。一般の事業法人の場合、返済が焦げ付いた金融機関からの借入金(債券)を、金融機関がサービサーに売却するケースでしか関わり無いでしょう。

E.放置する。

規模によっては一定の経済合理性がある選択肢ですが、抜本的な解決策ではありません。塩漬けにしすぎると、資料の散逸や時効等の問題が出てきて、譲渡(売却)処理が難しくなるケースもあります。

F.不良債権を譲渡(売却)する。

メリットが大きく、売却損は税務上も損金算入できます。どの段階の債権を、いつ、どこに売却するかや譲渡手続きにノウハウが必要ですが、特に黒字状態の時にやるとメリットが極大化します。日本版SPC法の浸透も背景にあり、一般の事業会社でもこの10年で急速に利用しやすくなりました。

注:弁護士法73条の規制で、弁護士事務所は債権の回収はできますが債権を所有できないため、弁護士事務所は債権譲渡(売却)はできません!弁護士に認められているのは回収委託のみです。またファクタリング会社は(法的な不透明さもあって)一般的に不良債権の資金化を事業対象にしていないため、不良債権の債権譲渡(売却)の対象になりにくいケースが多いです。

未収金などの不良債権を譲渡(売却)するメリット

  • B/Sが本来のあるべき会社の状態で表記できる(不良債権のオフバランス化)。
  • 債権管理・回収業務・償却処理に伴う事務負担の大幅な軽減。
  • 売却損を一括で損金計上(費用計上)でき、税務上有利。
  • 貸倒引当金を計上している場合は「引当の戻り」が発生し、会計上有利。
  • 自社償却で単純に「捨てる」よりはキャッシュフロー的に有利。
  • 決算に合わせ、ある程度タイミングを調整できる。
  • 税務否認の可能性が低い(償却処理より透明性が高い)

譲渡(売却)処理が不能な債権の例

  • 自社の現役代表者への貸付金
  • 同族会社への貸付金、売掛金
  • 反社会的勢力の疑いがある先の債権
  • 介護業界に関連する未収金
  • 葬儀業界に関連する未収金
  • 債権の実在性を証明する書類・データ(疎明資料)がない債権
  • 貿易活動によって生じる売掛金(海外債権)

松濤bizパートナーズのコンサルタントは、サービサー(法務省認可の債権管理回収業者)出身のため、不良債権の取り扱いについてノウハウと経験が豊富です。20,000円/90分のお求めやすい価格に抑えた定額料金制コンサルサービスの「フィナンシャルアドバイザリー」では、お客様の状況に合わせたアドバイザリーが可能です。不良債権の処理にお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

本件の記事は、債権管理回収スキームの解説を目的としています。当社は債権管理や処理に関する手法のご相談を承りますが、当社が直接に債権回収の委託を受けることは弁護士法の規定(非弁行為)によりできません。
お客様が債権回収委託をご希望する場合、お客様の持つ債権種別を最も得意とする回収専門弁護士事務所を用いたスキームをご提案いたします。
本件の記事は、節税部分を目的に当社が保証するものではありません。最終確認判断は、お客様、もしくはお客様の顧問税理士にての実施になります。

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