2023年10月開始、消費税インボイス制度の再延期はない!〜与党税制大綱から読み解く、小規模事業者がすべきこと〜

インボイス制度の準備
  • インボイス事業者として登録しなければ商取引が大幅に制限され、免税事業者のまま商取引を継続するのは(例外的な一部事業を除き)現実的には困難。
  • 2023年3月までにインボイス事業者登録しなければ、10月適用されない。
  • インボイス事業者登録すると、従来は免税であった(売上高1,000万円未満だろうが、設立2年以下だろうが)メリットは無くなる。
  • 免税事業者への経過処置が税制大綱で決められた(2割納税のメリット)
  • 法人だろうが青色申告事業者だろうが、扱いは同じ。
目次

インボイス制度とは

インボイスという紙が新たに制定される訳ではありません。貿易書類のインボイス(送り状)とも全く関係ありません。表面上は、登録されたインボイス事業者としての番号を、請求書や領収書に明示するだけです。

「自民党税制調査会」が税の仕組みを決める

12月16日(金)、2023年度の与党税制改正大綱が決定しました。
https://storage.jimin.jp/pdf/news/information/204848_1.pdf

変な話ではあるのですが、日本の税の仕組みを”事実上”決めているのは「自民党税制調査会」です。政府にも税制調査会はあるのですが単なる有識者会議で形式的なものです。自公連立政権になった後は”与党”税制調査会の名前も出てきますが、自民党の税制調査会で決定した内容を追認して公表する役割です。

マスコミ的には「法人税、所得税、たばこ税」の増税の話が主に報道されており(間違いでは無いのですが)ミスリードの感が強いように感じます。今回の税制改正大綱は「増税することは決めるが、増税時期は書き込まない」という異例な内容でした。極めて政治的な文書です。

あまり報道されていませんが、消費税のインボイス制度が2023年の10月から導入されます。実運用への影響が大きいこともあり、これまでも何度も導入延期されてきましたが、今度ばかりは不退転でやるように読み取れます。

2023/3/1追記
岸田首相が2月28日の衆院予算委員会で、予定通り10月より実施する考えを表明しました。
https://nordot.app/1003136447504973824?c=39550187727945729
延期または中止を望んでいた方も多いと思いますが、早めの準備をしたほうがいいかも?

インボイス制度は「益税の解消」を大義名分にしている

そもそも竹下登内閣で1989年に消費税を導入したとき、「事務負荷の軽減」を名目に、企業が預かった消費税を国に納入する時の簡易計算手法として「課税売上割合」という概念を導入したのが、益税の始まりです。経団連等の産業界とのバーターだったのかもしれません。当初の消費税率3%なら大した金額ではなかったのですが、現在の消費税率10%だと年間3,000億円程度(当社試算)が益税として企業側に残ります。

この益税の解消がインボイス制度導入の大義名分なのですが、金額的に益税解消により税額を上げたいのであれば、「95%ルール」と俗に呼ばれる益税を生み出す簡易計算ルールの廃止をするだけ済みます。業務負荷を増やす必要はありません。売上高1,000万円事業者の免税額など大した額ではありません。取引補足が目的なのが透けて見えてきます。

今後、企業が免税事業者と取引したくない2つの理由

  • インボイスが無いと消費税相当額の税額控除が出来ないため、仕入(買い手)側の利益が減る。
  • 業者により課税仕入と非課税仕入の取引伝票が混在する状況は面倒すぎる。

企業の現場感覚としては後者の理由が強いです。国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で、取引業者がインボイスに対応しているか確認することができますが、正直、いちいちそんなことやってられません。非課税仕入のイレギュラー伝票なんてのも面倒です。表向きは「利益が減るから」という理由で、インボイス登録しない免税事業者とは取引しない運用になると強く予想します。

まとめ

消費税のインボイス制度は、零細企業やフリーランス、設立2年未満のスタートアップ企業に強く影響します。専門的になるので細かい計算等は省きましたし、税の話なので書きにくいこともあります。今後の事業運営のお悩みについて、ご連絡いただけれは可能な限りお答えします。

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