社員の退職から考える、経営者が抑える意識のズレ。誰も得をしない退職代行サービスが謎の大盛況!

茶色の机の上にある経営者に提出した退職届
社員が退職する理由

人手不足が叫ばれて久しく、従業員やバイトの離職による人手不足倒産なども珍しくなくなりました。日本の完全失業率は、2020年2.8%、2021年2.8%、2022年2.6%、と低位安定しており、統計的にも実質完全雇用の状態が長らく継続しています。(実質完全雇用状態にも関わらず実質賃金は上がらないのも別の謎ですが・・。)

▼総務省統計局ホームページ/労働力調査(基本集計) 2023年(令和5年)3月分結果
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.html

一昔前なら「人なんて余ってる!」状態でしたので従業員の退職をリスクと捉える会社は多くありませんでした。ですが、今日ではトップクラスと言っても過言ではないくらいの経営リスクであるという認識です。特に中途退職は、ほぼデメリットしかありません。

従業員の中途退職によるデメリット
  • 組織でなく人に付随している技術&知識&ノウハウなどの無形資産が、中途退職とともに失われる。
  • 従業員の退職により仕事が回らなくなるものの、現在は補充採用も難しい。
  • 正社員の平均採用コストは過去最高レベル(新卒採用90万、中途採用100万円)に高騰しており、単純に新規費用が発生する。

明確なデメリットが無視できない大きさになった為、社内にプロジェクトチームを作ったり、人事系コンサルや離職防止コンサルなどと契約する会社も増えてきました。しかし大抵の場合『経営者サイドの意識のズレ』に本質的な原因があることが多いのですが、疑問の多い対処療法が散見されます。

ありがちな対処療法の例
  • 従業員アンケートを使う手法で課題を解明しようとしても表面的になる(そもそも本音は書かれない)
  • 退職引き留めテクニックで乗り切ろうとする。
  • 退職時期の引き延ばしを画策する。

一方で、退職を決めた従業員向けの「退職代行サービス」は大盛況です。そもそも従業員が離職するのを会社が止められる法的根拠はありませんし、会社が従業員に退職理由を聞くことすら民法や労働基本法のどこにも書いていません。(離職票に入れる退職理由コードに、自己都合退職か否かが必要なだけです。)

退職代行サービスを育てたのは誰?

にも関わらず、決して安くは無い退職代行サービス(相場は、通常2~3万円、弁護士事務所の退職代行サービスでは5万円程度)を利用する退職希望者が増えているゆえ、退職代行サービスへの新規参入も比例して相次いでいる状態です。

退職代行サービスを利用するケースはまだまだ多数派とは言えませんが、一般的には、通常の中途退職を上回ってデメリットが大きくなります。

退職代行サービスで退職された企業側のデメリット
  • 退職代行サービスから電話があった日から出社しなくなり、引継ぎができない。
  • 会社側にとっては想定外ゆえ、人員計画が苦しくなる。
  • 退職代行サービスにて退職者が出たことが外部に知られた場合、ほぼ確実に問題ある企業だと外部から思われる。

この手の話では、経営者の反応は綺麗に2パターンの考え方に分かれます。

  1. 退職代行会社を使うとは、人としてクズで無責任だ!
  2. 退職代行会社を使わないと辞められない会社なのは深刻な問題がある。

拡大している意識のズレとは

20世紀までは普通にあった土日や残業代も無いような会社はあまり見かけなくなり、特に中高年以上の世代では、すごくホワイトな社会に変化したと感じている人が多いでしょう。その一方で、社会や従業員の構成は多様化し、価値観を同一視する「家族的経営」のような一体感は成立しにくくなっています。これが意識のズレの基になっています。マイルールや会社独特の習慣なども、組織を維持する上でデメリットの方が大きくなっています。

新卒の離職パターン

人事業界用語では「ワークライフバランス」「クオリティオブライフ(QOL)」「働きがい」「心理的安全性」「エンゲージメント」などの単語が当たり前の様に出てきます。特に新卒採用では上記の抽象的な概念が繰り返し語られます。近年のインターンで語られる中身も大きく違いません。しかし実際の業務現場でこんな単語を使う機会はまず無いのが普通ですので、入社後にマイナスの印象を持ってスタートすることになります。上記は意識のズレが作られる例に過ぎませんが、新卒社員の3割程度は3年以内に離職するのが平均です。

中堅社員の離職パターン

Twitterで秀逸な投稿がありました。

就職氷河期世代やリーマンショック世代は、企業の中堅層を形成し主戦力となっている世代ですが、50社程度落ちるのが当たり前なぐらい就職活動に苦労した世代です。就職活動の経験が凄まじかったことから、以前の世代と比べ、転職のハードルが低いのが特徴です。特に今はかつてない売り手市場です。就職氷河期世代やリーマンショック世代は、今の転職活動を大変だとは思っていません。

ですから『賃金と責任が見合っていない待遇』や『合理的でない意味不明な指揮命令』が、『人間関係の悩み』に形を変えることで簡単に離職につながっていきます。特に『賃金と責任が見合ってない待遇』や『合理的でない意味不明な指揮命令』が、経営者や管理職の意識のズレで発生している(大抵、当人は良い事だと思ってやっている)場合は非常に厄介で、経営者や管理職側の意識改革しか打ち手がありません。

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