(書評)失敗の本質 -日本軍の組織論的研究-
1984年に出版された日本的組織論の名著で大ベストセラーだが、今日でも色褪せていない。
多くの人が推薦しているし、二次創作?の書籍も数多く出版される種本になっている。東京都知事の小池百合子氏も「座右の書」として称賛していた。出版から30年近く経った2013年、なんと電子書籍版も発行された。
有名な本だけあって、その内容の一部について様々な批判や賛否両論はあるものの、日本の様々な組織が現在抱えている問題が80年前と驚くほど重なっている。本書は日本軍の失敗の本質を「特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎて学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまった」ことと指摘している。『変われない日本』は今日でも色々思い当たるところがあり胸が痛い。イデオロギーを別にすれば、我々は80年前から何も進化してないのか?と多くの示唆と絶望を与えてくれる。
ビジネス書や自己啓発本のほとんどが「どうやった成功するの?」なのに対し、本書は「なぜ日本は負けたのか?」を組織論&戦略論の観点から論じます。軍記本や戦争責任本ではありません。研究の対象が下記の通りなので、近代史の知識が無いと読みにくい側面もありますが、日本のビジネス書の名著として『失敗の本質』はこれからも残ることと思います。
- 序章 日本軍の失敗から何を学ぶか
- 1章 失敗の事例研究
- 1ノモンハン事件――失敗の序曲
- 2ミッドウェー作戦――海戦のターニング・ポイント
- 3ガダルカナル作戦――陸戦のターニング・ポイント
- 4インパール作戦――賭の失敗
- 5レイテ海戦――自己認識の失敗
- 6沖縄戦――終局段階での失敗
- 2章失敗の本質――戦略・組織における日本軍の失敗の分析
- 3章失敗の教訓――日本軍の失敗の本質と今日的課題
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