米国の金融政策が効かないインフレの謎、200万人の労働者が消えた?
ウクライナ戦争が主要因ではない
2000年代後半から、世界的に経済は低インフレ基調でした。様々な要因はありますが、冷戦終了によるグローバリゼーションとIT化の二つが主要な理由です。
ところが2021年の夏頃から日本以外の主要国はインフレ率が急上昇し始めました。現在も進行中で、アメリカ・EU共に8%強の水準で推移しています。メディアでなされる解説はウクライナ戦争による資源高を理由にすること(直感的にわかりやすい説明だからか?)が多いですが、戦争が始まったのは2022年2月からで、インフレ開始の後の話です。戦争が今回のインフレの主要因ではありません。
過去のインフレの原因
マクロ経済学的にインフレの原因は主に以下の3つです。
- コスト上昇によるインフレ(コストプッシュインフレ)
- 需要が強いことによるインフレ(ディマンドプルインフレ)
- 通貨価値崩壊によるインフレ
今回のインフレは、上記3つに当てはまらないことから予想外の現象となり、米国や欧州の中央銀行は対応に後手を踏みました。教科書に載ってない初めての現象です。インフレ率と失業率は全くリンクしなくなっていますから、FRBの「金融政策にて失業率をコントロールし、物価の安定と雇用の最大化を実現する」という組織命題の大前提も崩壊しています。
「消えた労働者」が今回の原因
パンデミックによって人々の行動が同期し、供給量不足が発生、需給のアンマッチが同時に起こった!
直近のアメリカの労働参加率は62.3%前後で、コロナ時代前より1%弱少ない水準です。
アメリカの生産年齢人口は2億1,000万人程度ですから、200万人程度が労働市場から姿を消したまま帰って来ない計算になります。人手不足→賃金上昇→インフレ の根本にこの労働参加率の低下があるのですが、ここに大きな謎があります。姿を消した200万人の労働者は何処に行ったのでしょうか? ここまで書いて申し訳ありませんが、現時点で上記の謎に対する回答は持ち合わせていません。
ただ今回は、需要が蒸発したリーマンショック不況と正反対に「供給が減少したことによるインフレ」が現象の本質です。ですから、各国の中央銀行が行なっている金利引き上げによる需要の削減は「背に腹は変えられない」ゆえの、縮小均衡を落とし所とした金融政策で、別に最善手ではありません。したがって、デフレ体質が根深い日本において日銀が利上げに舵を切らないのは、理論的に正しい判断と言えます。
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