起業時のオフィス選びのリアル。おさえておきたい7つのポイント。

起業時のオフィス選び

会社設立時に法人登記する事務所・オフィスの問題。考え方の実践的なポイントをご紹介します。

『パソコンさえあれば仕事ができる』社会環境も急速に整ってきました。それに伴い、固定費の代表であるオフィスへのニーズも変わり、今時の最適なオフィス選びは昔より複雑になりました。会社(法人)起業するなら押さえておくべき現実的な重要ポイントをまとめました。

目次

オフィス形態別コスト比較

創業期は『固定費を抑える』のが基本セオリーで、オフィス選びは、コストとメリットを天秤にかけ選択します。
オフィス形態別に、ざっくりと並べてみました。上から下にかけて費用が高くなっていきます。(場所やサービスにもよるので一概には言えません。参考程度としてください。)

複数領域に跨がったサービスを提供している事業者が多いので、自分の優先順位を明確にしてから選びましょう。

【ポイント1】自宅での法人登記にはデメリットも大きい

よくある起業本などで、自宅住所での法人登記のデメリットとして定番なのは、

  1. 借家の賃貸借契約で違反になった
  2. 自己所有物件でもマンションの管理規定に引っかかる
  3. 住宅ローン減税が(法人相当分)受けられない可能性がある

等です。
最も重大なのは、「自宅住所がWeb上に公開されてしまう」問題です。人により捉え方は異なるものの、個人情報そのものですから、「避けるべきリスク」であることは自明です。

どちらにせよ、現在は法務局で会社の登記簿謄本を取れば、代表者の住所が記載されているのですが、商業登記規則等の一部を改正する省令の改正が決まり、法人登記簿に記載される代表者の住所が行政区画までに変更されます。
※2024年10月1日付で施行されます。

現在 :東京都港区北青山2-7-13
改正後:東京都港区

【ポイント2】法人の住所変更は面倒

私たちの会社が起業当時に利用していたオフィスは、オーナー側の事情により入居8ヶ月でクローズになってしまいました。会社設立後の本店住所変更は、個人の引越しより「圧倒的に面倒」です。各種役所の登録住所をそれぞれ変更し、登録免許税(印紙代)も再度払い、名刺等印刷物や各種Web情報を修正し、、、イレギュラーな事務処理の連続です。

法人住所は「変わる可能性が少ない住所で登記するべき!」と言うのは簡単ですが、相手がある事で現実には予測困難です。大規模事業者だから安心とはならない(=事業再編の決断が早い)ので、過度に拘ってもしょうがない面もあります。

【ポイント3】法人銀行口座の開設は非常に厳しい

銀行の法人口座の開設は、金融庁が「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」を公表して以降、年々難しくなっています。以前なら郵貯口座やネット銀行口座なら新設法人でも比較的つくり易かったのですが、「銀行への紹介」が無ければ、今は普通に落とされます。

法人口座が無くても、会計的には代表者の個人口座で資金を分別管理すれば良いだけですが、対外的な「見た目」としてベストでありません。法人登記と同時に銀行口座が作れなかった場合でも、

  • 会社のWebサイトを作り込んだ後
  • 契約の売上入金があった後
  • 営業開始後1年程度

などが口座を作りやすくなるタイミングです。

ちなみに「ネット銀行以外の法人口座が無いと、政策金融公庫の融資が受けられない!」と書いてるWebページも一部にありますが、これは誤りです。法人口座開設前でも融資申請は進められ、むしろ政策金融公庫から郵送された「融資審査結果の通知書」を持って銀行に行くと、極めてスムーズに口座開設されます。

【ポイント4】バーチャルオフィス特有の問題

バーチャルオフィスとは、物理的な実体がない、登記用の住所を貸してくれるサービスです。そのため、バーチャルオフィスでは一つの住所を多数の事業者が使用しており、住所をグーグル検索すると、常識外に多くの会社名が出てきます。近ごろは、聞かれた時にバーチャルオフィスを利用していることを素直に話せば問題にならないケースが増えていますが、知らない人からはネガティブに見られることも多々あります。

また、バーチャルオフィス住所は、銀行口座開設時(特に信金や地銀)の審査ハードルが非常に厳しいです。金融業界は反社やマネー・ローンダリング(資金洗浄)に敏感な業種で、「金融庁等から強力な指導」と法規制を受けていることが背景にあります。特にバーチャルオフィスの住所での口座開設に厳しい銀行が多いのは、万が一の時「行政からペナルティを食らう」という大人の事情です。

念の為バーチャルオフィスを契約する前には、「バーチャルオフィスの住所 詐欺」「バーチャルオフィスの住所 事件」「バーチャルオフィスの住所 反社」ぐらいの組み合わせでGoogle検索しておきましょう。

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このようなバーチャルオフィス特有の問題に対して、ある程度の対策をしている事業者もいます。ナレッジソサエティ京都バーチャルオフィスなどが優秀で、優先順位や各種制限などが許容できる範囲ならば、起業時のコストは極めて有利になります。

【ポイント5】シェアオフィス特有の問題

シェアオフィス(共用オフィス、コワーキング)は、施設の差が非常に大きいです。ドロップイン(時間貸し)利用だけでは法人登記できないオフィスもあります。何日かドロップインで使ってみないと実際問題として解らないことが多く、利用料金と利用環境が必ずしも比例しません。

例えば、「共用スペースがうるさくて作業に向かない」「施設のルールを守らない利用者が多い」などの客層問題や、会議室・電話スペース・Web会議スペース・フリードリンクなどの設備は、Web情報だけで判断するのは難しいです。

バーチャルオフィスを併設してる事業者もありますが、身分証や登記簿謄本、事業計画書、会社ホームページ等で審査を行なっているケースが多いです。(審査内容は事業者によって異なります。)

弊社では「コワーキングスペース永福」や「ボーナストラック」「コワーキングスペースinスーパーホテルPremier赤坂」などの小規模ですが個性的で客層の良いコワーキングを、メインオフィスとは別に時々利用しています。

【ポイント6】賃貸オフィス特有の問題

安い賃貸オフィスは、家賃だけを比べればレンタルオフィスと大差ありません。が、特に小規模なスタートアップ企業にとっての不利が大きい、賃貸特有のデメリットがあります。

  • 資金が「敷金」として寝てしまう。
  • 契約期間の2年縛りや、退去予告期間の縛りがある。
  • ゴミ出し、掃除、電気ガス水道の契約など、バックオフィス業務が必要になる。
  • スキャナ・コピー・シュレッダーなどの共有オフィス機器や、オフィス家具も無い。
  • 安い賃貸物件には、時として「望ましくない事業者」の入居があるも、予見は困難。

【ポイント7】士業など開業届が必要な業種での問題

特定の業種では、バーチャルオフィスなどの実体のないオフィスでは許認可が降りないこともあるので注意が必要です。

弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士

開業届が必要な士業は、「独立したスペースと書類保管場所」がある事務所でなければ登録を受理されません。

人材派遣業や職業紹介業

レンタルオフィス以上の事務所でなければ認可されません。

不動産業

「宅建業法上の事務所要件」があるので、完全個室型のレンタルオフィス以上でないと登録審査に通らない都道府県が多いです。

まとめ

初めて起業するのですから、知らない事は当たり前です。検索上位には「おすすめ◯◯選」のようなページばかり表示されますから、「本当に起業目的で調べている人にはマズイのでは?」との経緯で、考え方のポイントを書ける範囲で紹介してみました。

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